異常者と名言

1800年代後半に生まれたエリック・ギル。
彫刻・タイポ・エッチングで著名なアーティストだ。
彼はその生涯を終えた後に、湧き上がる様々な事実から注目された。

「真実を追い求めれば、美はおのずと表現される」
至極当たり前の言葉だが、ワタシは名言としてデザイン・アートを行う上の心得にしている。

ワタシは表現とされるものを制作する際、「美しい」という概念を絶対に外す事ができないタイプだ。

だからエリックの言葉が余計に突き刺さる。

デザインがしたいという想いを持ちながら学校へ通い、そして念願のデザイン事務所に入社したが、
何年もすると流れ作業になってしまうのを多く見受ける。
オペレーターとデザイナー。言葉だけでは片付けたくない2極性。
「あの人はオペレーターだから、期待しない」そんな言葉は正直聞きたくはないものだ。

エリック・ギルは、正直異常者の「類い」だ。
カトリック教徒でありながら、自分の子供に性的虐待を繰り返し、自分の姉妹とは近親相姦という性的関係、
以上なまでの性的欲求は、飼い犬にまで及んだという。これは完全な性行為というものへの依存だ。

その事実が知れ渡り、彼の作品が見直されたというのはアート界の独特な流れである。

そんな短気で異常な程の性的欲求の持ち主は、常に「美しい」ということに執着していたように思う。
家族を愛する、子供を愛する、飼い犬も愛する。
「愛」の表現は様々であり、そのアプローチも様々だ。

ワタシはエリック・ギルを異常者とは呼ばない。美しい物を求めるという点では尊敬しているのだ。

我々としては、己の表現するデザインやアートという区分(カテゴライズ)されたものと、どのように
向き合うべきなのか、常に考えたいものである。